エンシュア、ラコールはもう処方しません

仕事のこと

特別養護老人ホームの嘱託医から

エンシュア、ラコールは今後処方しない

というお達しがありました。

 

理由はこれらの栄養剤の処方について保険請求が認められないからです。

 

以前勤めていた薬局でもサービス付き高齢者住宅(サ高住)や特養を持っていましたが、食事量が落ちてきた高齢者向けにこれらの栄養剤が普通に処方で出されていたので、査定されているという事実を知りませんでした。審査には地域差もあるのでそれも要因の一つなのかもしれません。

こがねむしが現在働いている市区町村の支払基金は審査が厳しいと有名ですから。

 

個人的には医療費に費用対効果を求める人間なので、こうした医師の方針には賛成です。

そして栄養補助食品なら巷に売ってますから食品としてご自身で用意くださいって方向のようですね。まあ、一医療従事者としては年々値上がりする国民医療費を考慮しても妥当な選択だと思います。言い方は良くないのですが、老い先短い高齢者で尚且つ口から栄養を摂取できない人の栄養管理まで国が面倒を看れないということでしょう。

 

ここで改めて各種の経口栄養剤の適応を改めて調べてみることにしました。

 

高齢者施設で用いられる主な経腸栄養剤

まず、特養などの施設で取り扱われる経腸栄養剤には以下のものがある。

  • エンシュアH(エンシュア・リキッド)
  • ラコールNF配合経腸用液
  • ラコールNF配合経腸用半固形剤
  • エネーボ配合経腸用液
  • イノラス配合経腸用液

これらは半消化態の栄養剤で吸収するためには消化の過程を経る必要がある。要は消化管が機能しているけど何らかの原因で経口摂取が出来ない場合に使われるため、特養などの高齢者施設で用いられることが多かったりする。

半消化態の栄養剤には食品と医薬品とに分類が分かれており、上記に挙げたものは医薬品(処方せん医薬品以外の医薬品)に分類されるものなので医療保険の対象となる。

 

効能効果について

効能効果(適応)は以下の通り

エンシュアH

一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難で、単位量当たり高カロリー(1.5kcal/mL)の経腸栄養剤を必要とする下記の患者の経管栄養補給に使用する。

  • 水分の摂取制限が必要な患者(心不全や腎不全を合併している患者など)
  • 安静時エネルギー消費量が亢進している患者(熱傷患者、感染症を合併している患者など)
  • 経腸栄養剤の投与容量を減らしたい患者(容量依存性の腹部膨満感を訴える患者など)
  • 経腸栄養剤の投与時間の短縮が望ましい患者(口腔外科や耳鼻科の術後患者など)

そもそもこうした栄養剤は経口摂取が出来るケースで食事量が落ちたことによる低栄養状態を改善する目的としては適応が無く処方できないんですね。

ラコールNF配合経腸用液

一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する。

長期の場合も使用できるが、その場合は経管栄養補給ということで経口で長期使用は出来なさそうですね。

ちなみに、ラコールNFの名前の由来はRapid-Conrrol New Formulaから来たもので、速やかな栄養管理ができるビタミンK1量を減量した新しい経腸栄養剤、から来ている。

ラコールNF配合経腸用半固形剤

一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する。

ということで、ラコールNFと同じです。ちなみにラコールNFの半固形剤は経腸栄養でしか使用することは出来ません。

エネーボ配合経腸用液、イノラス配合経腸用液

一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する。

いずれも同じでした。

高齢者施設における栄養剤の今後

今回調べた内容をまとめるとエンシュア以外はシンプルに術後の栄養保持か、長期で使用する場合は経管栄養で、ということが分かりましたね。

やはりいずれも食事量が低下している高齢者の栄養管理には保険で使用することは出来ないということです。

昔は高齢になると口から食べられなくなり、徐々に衰弱して亡くなる、というのが自然だったかと思います。ですが、各種栄養剤の開発しかり医療技術の発展につれ、一昔前なら亡くなっていた人たちが亡くならずに済むようになっています。

これは助かる命が増えたという点では喜ばしいことですが、こと高齢者に関しては死という自然現象を複雑にしていると言わざるを得ません。自然に死ぬ機会を奪われているともいえる状況なのではないでしょうか。

高齢者施設は高齢者を生かし続けるための施設ではないはずです。特に特養など最後の看取りまで行う施設であれば衰弱して死に至るという過程も自然のこととして受け入れて欲しいものです。

そう考えると栄養管理も衰弱を前提とした管理が必要なのではないでしょうか?

採血結果だけを見て栄養状態が悪いから栄養剤を使おうというのは違うのではないかと私は思います。果たして看取りの人にどの程度の栄養管理が必要なのか。

そしてそこで働くスタッフにも高齢者を預ける家族にも本当にその栄養管理は本人が望んでいることなのか、きちんと話し合って欲しいものですね。

少なくとも採血結果だけを考慮した安易な栄養剤の処方には私自身は反対ですし、査定を望みますね。

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