最近、点眼の順番でgoogle検索で不穏な回答を見つけたので忘備録として記録しておく。
前置きが長くなってしまうが、まず初めに。
薬剤師の皆さんはヒアルロン酸点眼とフルオロメトロン点眼が処方されたら、どのように指導するだろうか？
普通の薬剤師ならヒアルロン酸点眼→5分ほど間隔を置いてフルオロメトロン点眼の順で指導すると思います。
何故なら一般的に点眼（及び眼軟膏）は
の順で使用することが推奨されているからである。
理由は懸濁性点眼は水に溶けにくく、眼軟膏は水溶性点眼をはじいてしまうためです。
ということで水溶性のヒアルロン酸点眼→懸濁性のフルオロメトロン点眼の順番で指導する薬剤師が圧倒的に多数だと思います。
また、大まかな目安ですが、同じ水溶性点眼が複数ある場合は主薬を最後にすると良いとされています。例えばドライアイでヒアルロン酸点眼とレボフロキサシン点眼が出ている場合、レボフロキサシンの方が主薬でしょうから、ヒアルロン酸点眼→レボフロキサシン点眼の順が好ましいとされます。
ただ、点眼で一番大事な点は点眼同士の間隔を5分以上空けることでしょう。
これは結膜嚢の涙液が完全に置き換わるのに約5分かかるとされる点から来ている。5分以上間隔を空けることで前に点眼した点眼液は結膜嚢に吸収され、点眼液の相互作用はほとんどなくなると考えられている。
ということで点眼間隔を5分以上空ければ順番はさほど意識しなくても良いだろうというのが個人的な見解になります。
忙しいサラリーマンなどに服薬指導する場合は『おすすめの順番もあるが、面倒なら最低5分は間隔を空ければ順不同である』と指導しています。
そもそも点眼液は指した瞬間から吸収されるのではなく、いったん結膜嚢に貯留された後、角膜を通じて体内に吸収され薬効を発揮する。結膜嚢に入りきらない点眼は眼からあふれて眼瞼に付着したり、鼻涙管を介して鼻や口などに入っていき、副作用につながることもある。
結膜嚢の保持能力は約30μLで、点眼１滴の容量は約30～50μLとなっているので、点眼は１滴指せば十分である理由はここにある。
前置きが長くなりましたが、ここからが問題になります。
google先生に聞くと、一部の点眼で間違った順番が出てくることがあります。
例えば、「ヒアルロン酸 ピレノキシン 順番」で検索すると…。
こんな感じで『AIによる概要』がトップに表示されます。
先に挙げた一般的知識からするとピレノキシン→ヒアルロン酸の順を示唆する情報は正しくないと感じます。5分空けていれば順番はそこまで問題でないにしろ、素人でこれを見て受けた説明と違う！と反論される方もいるので困ったもんです。
この『AIによる概要』とはgoogle検索機能の1つで生成AIが自動的に検索結果を要約して表示するものです。2024年の夏ぐらいから表示されるようになったみたいですね。
AIによる概要について調べてみると、まだまだ未熟な機能のようで誤情報もかなりあるという。
googleのヘルプセンターでも、生成AIは情報や事実ではない架空のことを言うこともあり、間違えることもあると説明があった。それならば機能をオフにしたいが、残念ながら現在この機能をオフにすることが出来ないという。
普通に情報リテラシー能力がある人ならこの「AIによる概要」は読みはしても、鵜呑みにはしないだろうし、個別のWebサイトから信用性の高いサイトを選んで情報を拾ってくるでしょう。
しかし一部の情報リテラシー能力が欠落している人がこのトップに出てくる嘘情報を吟味もせずに鵜呑みにしがちなので質が悪い。
実は今回この記事を書いたきっかけもこの点眼の順番についてネットの誤情報を鵜呑みにした薬剤師が一般論と異なる説明をしたことから眼科の医師を巻き込む騒動に発展してしまったことに端を発している。
たとえ検索した結果ヒットしても上にも書いた一般的な知識があれば誤った服薬指導は防げたとは思うのですが。
薬剤師にも情報リテラシーは必須だし、AIによる概要を鵜呑みにしない知識の土台って必要ですよね。
