施設在宅のお薬紛失、落薬は誰の責任?

施設在宅を担当していると、施設スタッフが薬をなくしたり落としたりしてしまい、薬が足らなくなってしまうことがあります。

こういった場合、皆さんの薬局ではどう対応していますか?

今回はそのような場合における薬局の対応を書いてみようと思います。

 

施設で紛失、落薬したお薬代は誰が支払う?

うちの薬局が介入している特別養護老人ホーム(以下特養)のヘルパーさんは服薬介助が苦手な人が多いのか、薬を落無くしたり、落としたり、ということがたまにあります。

大体は普段から多少の残薬分のストックがあるので、そちらを使っていただきます。

ですが、コンプライアンスが良好な患者さんで残薬の余裕がない場合もあります。

通常、こうした紛失や落薬があった場合、処方せん発行時に紛失した分を医療機関に依頼して伸ばしてもらい補填します。そして補填分の医療費は患者さんではなく施設側のミスなので、通常は施設に請求します。

 

実際は、、、ケースバイケース!

ですが、薬局によっては定期の処方に疑義照会を行い紛失した分日数を伸ばしてもらう場合があります。その場合は患者の医療保険を使うので、患者に請求が行きます。

本来は患者さんの責任ではないので、こうした対応は倫理的にも法的にも問題があると思われますが、患者さん及びその家族は補填した分の差額に気づくことはまずないと思います。

何故かというと保険医療で補填する場合、薬剤料しか増えないため、微々たる金額になるからです。

高齢者施設ですから当然1割負担の患者が多く、補填の日数も1日分とかなので、増えたとしても数円の世界です。また、処方日数は往診の都合で普段から変更することもあるので、この金額の差について、家族が気づいて内訳の開示を求めてくることは今までありませんでした。

こうした事情があり、患者の医療保険を使って施設のミスを補填するということが行われる場合があります。

 

施設に請求する場合は自費処方せんが必要

これが施設負担となるとその延長分の処方せんは自費で発行する必要があります。

そうすると薬剤料だけではなく、そのお薬を処方するための処方せん発行料から薬剤料、調剤基本料など処方に関わる全てが自費になりますから負担は数千円に跳ね上がります。

また処方せんを発行する医療機関も、小さい個人経営の場合自費処方せんの発行の仕方や請求の仕方が分からないため、事情を話しても理解してもらえない場合もあります。

そうすると、通常の医療保険を使った処方せんで日数を伸ばさざるを得なく、一医療従事者としてはなかなか歯がゆい思いをします。

 

医療費が全額自己負担でないのは医療保険のお陰

多くの施設はこうした医療費にまつわる事情を知りません。お薬代だけがかかる(しかも1割負担)だと思っている場合が多いのです。

ですから薬を落としたり無くしては気軽に『日数伸ばしてください』と言ってきますが、実はこうしたお金がかかっているということを知って欲しいものです。

せめて医療関係者なら、医療費の負担割合が3割だったり1割だったりするのは国民皆保険制度の恩恵だということくらいは知っていて常識なのではないかと思います。そして合わせて残りの7割及び9割は国民の税金などから負担されているということも是非知ってください。

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