こがねむしは某駅前の薬局で働いている。
駅前ということもあり、患者層は老いも若きも混在している。若者は大抵問題ないのだが、問題は高齢者である。
高齢者の何が問題かと言うと、ほぼ確実に認知症と思しき人が適切な治療に繋がっていない点である。
門前の医療機関は眼科、糖尿病、甲状腺などの内分泌疾患を筆頭に、循環器や腎臓内科などの専門領域をカバーしているが、一般内科と精神科が無いのである。ちなみに風邪で受診することも可能だが、大した薬も出ないし、発熱外来もないし抗体抗原検査も行っていない。
専門領域に特化することは大いに結構だと思う。しかし、高齢者の抱える問題はそれだけではない。代謝性疾患や循環器、慢性腎臓病だけでなく、認知機能も関連して総合的に健康に問題を抱えているのである。それが疾患を抱えた高齢者の特徴だったりするのである。
山のように薬を出すのは結構だが、果たして高齢者の何割がちゃんと飲めているのだろうか。多くの薬を処方してもコンプライアンスが保てなければ意味が無いだろう。専門領域に特化するだけでなく総合診療科のような全体を見ることができる&別の病院につなげることができる診療科や地域連携室も必要なのかなと思う。
つい先日も、目薬が分からなくなったと言い80代の高齢女性が来局した。持参薬を見るとどれも酷く汚れいて中には去年の開封済みの点眼もあった(今5月も下旬ですよ!?)。古い薬は薬局で廃棄して新しい薬だけ整理して渡したけど、おそらく今後も使えないのではなかろうか。適切な治療を受けていない80代がそこから認知機能が回復するとも思えない。当該患者は門前の糖尿病内科にもかかっているが、点眼でこの有様では恐らく糖尿病の薬の内服もできてないだろうと容易に想像がついた。
生活像を聞くと、ご主人と2人暮らしで子供は居るが、ほとんど連絡を取っていないという。
話は逸れますが、問題を抱える高齢夫婦は子供が居てもほぼ子供と連絡を取っていない。まあ子供など頼れる人がいないからこそ生活に問題を抱えるのでしょうけど。この仕事をやっていると子供は老後当てにならないし、当てにしてはいけないことが本当に良く分かる。
話を戻して。当該患者に介護保険のことを聞いてもそれが何のことであるかも分からない様子。国民健康保険と混同してました(。-_-。)
もう少し突っ込んで聞いたところ、糖尿病内科の主治医が心配してデイサービスに繋いでくれているようだった。まあ、糖尿病内科の主治医は気にしてくれていたんだと少し安心したけど。デイサービスを利用しているなら介護保険も恐らく認定が下りているだろうし、ケアマネもついていると思うのですがそこまでは聞き取れず…。
地域包括支援センターや行政への相談も少し触れましたが、やはりピンとこないというか、「分からない」を繰り返すばかりだった。
とりあえずこのまま話しても埒が明かないと思い、薬の整理だけして眼科医にトレーシングレポートを上げて終了にしましたが。内科医にもトレーシングレポートを上げようか迷うところだ。
体感としては80代でポリファーマシーと思われる患者のうち半数以上はきちんと飲めてないと感じる。ただ、厄介なのは高齢者の多くは口頭ではちゃんと飲めていると主張する点である。受診間隔もおかしいし、残っている計算の薬が残ってないと言い張る高齢者も居れば、受診間隔が明らかに開いているのにまだ余裕があると言い張る高齢者も居る。受診間隔がおかしい高齢者は恐らくほぼ薬が飲めてないとみていいと思う。
だが患者の言うままに処方する医師にも問題があると思う。薬を無くしたとか、長期で出張するとか何かしらのやり取りがあって理由があって出すならいいだろう。しかし月頭に1か月出した処方を当月中に別の医師がまた1か月出し、本人も理解できていないというのは明らかに病院として患者の情報共有ができていないし医師としての説明・確認の義務を果たしてないのではないかと感じる。
個人的には認知症が疑われるならそちらの治療が優先なのではないかと思うのですけどね。というのも理解力が低下していたら折角処方された薬も飲めませんし、薬物治療もくそもない訳ですから。
あとは診察した医師が一番良く分かっているのだろうから精神科の受診勧奨をするべきだと思う。薬剤師もそれとなく受診勧奨しますが、薬剤師がするよりは説得力ありますからね。
ということで、もし医師の方が当ブログをお読みであれば、今一度処方を出す前に目の前の高齢者かが飲めているかどうか、口頭ではなく、行動から探っていただけるとありがたいです。