周期性発熱とタガメット

仕事のこと

うちの薬局にはADHDで長いこと来局している患者さん(Aちゃん)がいます。

そのAちゃんに最近変わった処方が出ました。

Rp1.タガメット錠200mg 2T2× 朝夕食後(粉砕)

という内容でした。

 

タガメットと言えば、数あるH2ブロッカーの中でも相互作用が多くて使いにくいという印象があります。そして実際に胃酸を抑えるという目的で処方される方が珍しい記憶があります。

つまり、タガメットが処方されるということは胃酸分泌抑制以外の目的で処方されていると思う方が妥当な薬剤だったりします。

今までの経験上整形領域で比較的高齢者に処方されることが多く、その場合の処方目的は『石灰化の予防』です。これは適応外使用として保険診療が認められているものになります。

しかし、今回は小児の処方なのでこの可能性は低いと思われます。また用量としては約15mg/kgで小児に通常使用される量(20~40mg/kg)よりは少なめです。

欠品もしていたこともあり、母親に連絡がてらどういう経緯でこの薬が処方されたのか聞いてみると周期性発熱の疑いがあり、出されたとのことでした。

 

ということで、今回は周期性発熱について勉強したことをまとめます。

周期性発熱(症候群)とは

概要

周期的(Peiodic)に繰り返す発熱(Fever)に首のリンパ節主張(Adenitis)、咽頭炎(Pharyngitis)、口内炎(Aphthosis)を伴う発作を特徴とする病気で、それぞれの頭文字をとってPFAPAともいわれる。自己免疫性疾患である。

2~3歳での発症が多く、通常は5歳までに発症する。

症状は周期的に発熱すること。39度以上の発熱が平均4~5日続き、これを4~5週間の周期で規則的に繰り返すことが特徴である。

発熱以外には扁桃腺炎、口内炎、咽頭炎、首のリンパ節の腫れが多く見られ、腹痛、頭痛、嘔吐、下痢、関節痛なども見られることがある。

原因

現時点で原因は不明だが、自己炎症性疾患の一種で遺伝が関係していると言われる。発作中は免疫系の活性化が起こっており、これにより発熱などの症状が引き起こされる。

治療

根治治療として確立された治療法は今のところ見つかってない。発熱発作をコントロールする対症療法がメインとなる。

・ステロイドの内服が発熱発作に有効であるとされる。発熱時にプレドニン0.5~1mg/kgを1回もしくは2回服用することにより症状が改善する。プレドニゾロンが著効するため、診断に利用されることもある。

・予防的にはH2ブロッカー(シメチジン)が用いられる。10mg~20mg/kg/日(効果不十分な場合は増量可能)を1日2回に連日内服することで約60%に発症抑制が認められる。ただし、発作が改善に消失するのは1/3程度とされている。

・内科的治療に抵抗する症例には扁桃摘出術が行われ、緩解率は70~80%ほどである。

予後

多くの例で年齢と共に自然に発作の頻度は減少し、10歳代のうちには自然治癒することが多い。

以上。

 

なるほど。確かにAちゃんはここ2、3か月定期的に抗生剤が処方されてきました。

ある時はサワシリン、ある時はクラリスロマイシン、メイアクトなんかも出てたっけ?どれを服用しても効果が芳しくなく定期的に調子が悪いということが続いていましたが、周期性発熱の疑いだったんですね。

私が見てきた周期性発熱の患者さんだとステロイドの処方がメインでしたが、今回初めてH2ブロッカーに周期性発熱の発生予防効果があると知りました。勉強になりますね!

追記:2023/8/25
とある市立病院が周期性発熱の小児にタガメットを処方する例が増えてきた。一番用量の多い子で5歳児で40mg/kg/日で処方されていました。調べてみると効果不十分の場合は増量可能(成人上限800mg/日を超えないこと)とあったため、まあ許容量でしょう。

実際20mg/kg/日の時期は発熱を繰り返していたようですが、40mg/kg/日に増量して以降は熱発は治まっているとのことでした。

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