便ショックとは何ぞや?

特養の看護師から最近よく聞かれる言葉に「便ショック」というものがあります。

聞いた感じは、排便時に意識消失をする現象のことを指しているんだろうなと思いましたが、正確には「便ショック」という医療用語は無いそうですね。

 

調べてみると、便ショックは

排便前後などに血圧が低下し、体調不良を訴えたり、嘔気、めまい、冷や汗などが起こるもので、酷い場合は意識消失をきたす現象

を総じて指すもので迷走神経反射によって起こるようですね。

 

排便時はいきむことが多いと思います。そのいきみに伴い、血液循環の低下と腸管の運動に伴う迷走神経反射がこれらの体調不良の原因のようです。

だから便秘の人が多い高齢者施設で良く聞かれる言葉なんだと納得しました。

 

いきむことにより、また便秘で必要以上に気構えることで迷走神経反射が起こっちゃうんですね。

ちなみに迷走神経反射とは

ストレス、強い疼痛、排泄、腹部内臓疾患などによる刺激が迷走神経求心枝を介して、脳幹血管運動中枢を刺激し心拍数の低下や血圧低下をきたす生理的反応のこと。

本反射波生命維持のための防衛反応であるが、過剰反応により身体異常を生じることがある。

というもの。

排便時のこうした反射を防ぐためには日頃の排泄ケアが重要なんでしょうけど、高齢者で『食べない、飲まない、動かない』が常態化している場合、どんなに下剤を使っても出ないものは出ないんですよね。当たり前なんですけどね。

ただ、せめて『動かない』くらいは施設でケア出来ないかなぁと思います。

便秘の訴えがあるとケアが大変だからすぐに下剤を増やしてください、という現場からの訴えがあるのですが、下剤だって作用機序を考えれば水分取れないなら効果ないでしょ?っていうものも多いんです。

それなのに、『下剤を飲めば出るはず』と思っているスタッフさんの多さに驚きます。

とある高齢者でカマ、センノシド、アローゼン、グーフィス、アミティーザを飲んでいる人が居るんですが、全然排便が無いなそうですね。よく聞くとやはり『食べない、飲まない、動かない』なんですよ。

薬が弱いのではないか?と問われたので食事や飲水の量を聞くと、1日水分摂取量が味噌汁1杯程度らしいんです。また食事量も5割取れないそうで。

まず第一にその水の量で快便な訳が無い。もう少し体の仕組みとお薬の基本的な機序くらいは知っていて欲しいと思います。少なくとも薬については定期的に勉強会もしていて資料もお配りしてるんですから。

 

介護職員の方、下剤はあくまでも通常の生活をしていても排便コントロールが不良な方に使って効果が出る薬、ということを忘れないで欲しいと思います。

基本は食事(特に飲水量)と体を動かす、規則正しい生活をすることが便秘のケアの第一歩です。薬を飲ませようと躍起にになる前にまず日常生活のケアからお願いしたいと思います。

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