非結核性抗酸菌症~肺MAC症について~

仕事のこと

肺MAC症の処方についてのまとめ

80代女性 大学病院の呼吸器科より下記処方があった。

Rp1.クラリスロマイシン(200) 2T2× 朝夕食後
Rp2. エサンブトール(125) 2T2× 朝夕食後
Rp2.リファンピシンカプセル(150) 1C1× 朝食前 全て14日分

高齢女性、呼吸器、この3種の処方とくれば非結核性抗酸菌症でほぼ肺MACで間違いないと思われる。

まずは肺MAC症についてのおさらい。

肺MAC症とは

非結核性抗酸菌(NTMnontuberculous mycobacteria)とは抗酸菌のうち、結核菌らい菌を除いたものの総称である。

非結核性抗酸菌により引き起こされる呼吸器感染症や皮膚感染症を総称して非結核性抗酸菌症NTM症)という。

NTM症の中でも起因菌がMycobacterium avium complexによるものを肺MAC症という。

以下に概要をまとめる。

肺MAC症とその他の特徴

抗菌療法は上記の処方3剤を併用とするが、副作用の問題で、上記薬剤が使用できない場合は下記を単独で用いる

エリスロシン錠 1回400mg 1日1回 食後

この方法は投与期間に定まった見解が無いため、数カ月使用して変化が無ければ終了する。

なお、キードラッグであるクラリスロマイシンの単独処方は耐性化の懸念が大きく、推奨されない。

服薬指導で注意する点

リファンピシンは成分の色調より、尿・便・唾液・汗・涙などが赤橙色になることがあるため、不安を生じないよう事前に説明する。またソフトコンタクトレンズも変色することがあるため、服用中の使用は控えた方がいい。

リファンピシンは食後投与で血中濃度の低下がみられるため、原則として朝食前空腹時投与となっている。しかし、食後投与でも血中濃度のピークが若干遅れるのみで問題ないとの見解もあり、空腹時投与による嘔気などの症状でコンプライアンスが下がる恐れもあり、他の抗結核薬と同時に食後服用させることもある。

 

2025年4月追記

最近、門前の呼吸器内科より60代の女性に下記の処方が出た。

Rp1.アジスロマイシン(250) 1T1× 夕食後
Rp2. エサンブトール(125) 2T1× 夕食後
Rp2.リファンピシンカプセル(150) 2C1× 夕食後 全て28日分

非結核性抗酸菌症の治療に使われる抗生剤としてはクラリスロマイシンかエリスロシンというイメージであったが、アジスロマイシンが処方された例は初めて経験した。理論上、マクロライドなので使われることはあるのだろうが、調べてみると…。

どうやら2022年2月には支払基金より適応外として認める通知が出ており、今までも臨床で長く使用されてきたと思われる。

当該患者は以前から肺疾患を患っており、カルボシステインを長らく服用していたとのこと。恐らく数十年前から診断は下っていたのだろう。そして最近労作時に息切れするようになり加療開始となったようだ。

タイトルとURLをコピーしました