薬局は接客業であるが故、クレームを受けることは日常茶飯事だ。
特に待ち時間に対するクレームはその最たるものだ。しかし、最近は医薬品の流通が不安定なため在庫不備によるクレームが全国的に増加しているとのこと。
特に現在、風邪などの疾患で処方されることが多い鎮咳薬、去痰剤、一部抗生剤の流通が滞っており、場合によっては全量お渡しできないこともままある事態となっている。
そんな状況でも我々医療従事者は近隣薬局に相談したり、医師に代替薬を提案したり、欠品が続く中どうしたら最善な医療を提供できるのかフル回転させている。
こうした努力が実を結んでいたのか、今まではうちの薬局に在庫不備によるクレームはなかった。
しかし、とうとう在庫不備による対応でクレームが本部に入ってしまった。
そもそも。
一体何故今、医薬品がこんなに流通不安定になってしまったのか、まずは経緯を整理してみたいと思う。
医薬品が不足している原因
私の記憶なので正確でない点もあるが、昨今の流通不安定な状態を作った最初のきっかけは
2020年の小林化工の水虫薬による死亡事件だったように思う。
それとほぼ同時期に日医工で自主回収が増えていると思っていたら、2021年医薬品製造工程で不正が発覚し業務停止命令が下された。
その時期から日医工が作っているGE医薬品の流通が不安定になり、サワイやトーワなど他のGEメーカーへの需要が増えたことで一気に医薬品が入りにくくなった印象がある。
更に、GEがないなら先発しかない。みんな考えることは同じで先発医薬品の需要が増加し、供給が追い付かなくなってしまった。そうして色々な薬が発注しても納品されなくなった。
そして2022年に始まったロシア・ウクライナ戦争。まさかこの戦争が医薬品の流通不安につながるとは思いもしなかった。しかし実際にはこの戦争により直接物流が妨げられただけでなく、原料の調達ができなくなったり原油の高騰などが起こり、めぐりめぐって医薬品の供給不足に拍車をかけることになった。
そして、その他にもコロナや季節外れのインフルエンザ流行によって風邪薬の需要が高まったのも良くなかった。今は需要と供給のバランスが完全に崩れた状態なのだ。本当にとんでもない時代になってしまった。
以上が現在医薬品の流通が不安定となっている原因とその背景だ。
今回のクレームについての経緯
さて、話は戻り本部に入ったクレームの話に移ろう。事の概要は以下の通り。
昼頃当該Ptは風邪処方をもって来局したが、その中の「メジコン錠」の在庫が無かった。
本来風邪薬は急性症状の対症療法となるので、早めに薬を渡すのが原則だ。だから普段なら近隣薬局に薬を借りて用意したりする。
しかし、ここ最近は近隣薬局どころか全国的に鎮咳薬が無い状態なので、現在うちの薬局では処方を持参された段階で無い薬は以下の対応をしている。
②日数を短くしてお渡しできる分のみとする(在庫がある場合のみ)
③在庫のない薬のみ処方削除し、それ以外の薬をお渡しする
④①~③で了承されない場合はお断りをする
ちなみに上から順に難易度が高い選択肢となっている。
医療従事者にとってこの異常事態は常識だけど、患者は知る由もない。だからどうして医薬品が無いのか昨今の世界情勢も踏まえて丁寧に説明する必要がある。
だが、あまりにも毎日たくさんの同じような欠品対応をしてしまっていたせいか、一部のスタッフの対応が事務的になってしまったようだ。その点をクレームとしてご指摘いただいた。しかもかなり厳しい言い方で。余程腹に据えかねたのだと思われた。
患者は『削除しかない。処方削除しないと薬を用意できない』と冷たい対応をされた捉えたようだった。確かに現状は選択肢としては④しかない。しかし、最初に『申し訳ございません』という謝罪の言葉があればまた違ったと思う。まずは謝罪の言葉を言うべきというご指摘もされていた。もしかしたら謝罪していても事務的に聞こえたのかもしれない。
いずれにせよ、お店としてかなり厳しいクレームを受けてしまった。
今後、繰り返さないためにもどういう対応をすればよかったのか考えてみたい。
今回のクレームに対する今後の課題
個人的な意見として、必要な対策は以下の通り。
②丁寧な説明
③最後にご提案
第一にまずは謝罪
患者さんは体調不良でしんどい状況だ。病院で待たされた挙句受診し、ようやく処方せんを手に入れて薬局にやってくる。そこで薬がもらえることに希望を持っている。
そこで薬が無いとなればかなりショックに違いない。そこでまずはやはり謝罪が必須となる。
スタッフの中には自分は悪くないという考えの人も居るが、確かにそう。だが、薬局に在庫が無く患者に迷惑をかけているのは事実なのでそこは心から謝罪をしないといけないと私は思う。
そして次に丁寧な説明
『今ないんです』だけではなくて、何故無いのか理由も含めた説明が必要だろう。説明しないと他の薬局にはあると思い込み、探した結果薬局をたらいまわしにされてしまいかねない。今の状況はここの薬局だけの話でないことは我々医療従事者は知っていても患者は分からない。だから全国的、世界的に流通が滞っている医薬品であることを説明する必要がある。
実際、このクレームを受けた患者も『薬局にない、削除しかない』という説明をされ、他をあたった挙句、他にもなく再来局されますます疲弊してしまったとのこと。これは明らかにうちの薬局スタッフの説明不足だろう。
そして最後に選択肢の提案
ここまできてようやく①~④の選択肢の提示をする。当該スタッフは謝罪もそこそこにいきなりこの選択肢を提示してしまったため、患者が不快感を持ってしまった。選択肢を提案する前に言わねばならい言葉やしなくてはいけない説明がある。
近く会社の委員会があるのでそこで今回のクレームについて意見をすることになっている。
今回のクレームから考える店舗課題、再発防止対策として今回のブログにまとめた内容を提示する予定だ。
終わりに
最後に患者の皆様。現在医薬品が流通不安定である状況にご理解いただけますと幸いです。
今強い症状が無ければ予備として処方をしてもらうのを控え、今症状が強い患者さんに譲っていただけますとありがたいです。
また処方を出す医師の先生方も代替薬についても処方でコメントを入れてくれる方もいて感謝しきりです。忙しい中柔軟に疑義照会に対応してくださり有難うございます。厳しい状況ですが、頑張って乗り切っていきましょう。
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