眼科にて珍しい処方が出たので忘備録として。
まずはグラナテックの基本情報についておさらい。
グラナテックの基本情報
商品名・発売日:グラナテック点眼液 2014年11月
一般名:リスパジル
効能効果:次の疾患で、他の緑内障治療が効果不十分又は使用できない場合:緑内障、高眼圧症
用法用量:1回1滴を1日2回
主な副作用:結膜充血(約7割)、結膜炎、眼瞼炎、眼刺激が多い。
包装・薬価:5ml/本 449.4円/ml(2247円/本!)
製造販売:興和株式会社
グラナテックの作用機序
グラナテックは販売当初から、世界初のROCK阻害薬の点眼というのが売りで、私も勉強会で緑内障点眼で初めての作用機序を有する点眼という記憶が残っている。
その作用機序は房水流出の主経路である繊維柱帯-シュレム管経路組織のRhoキナーゼを阻害することにより房水流出を促進することで眼圧を下げるものである。
繊維柱帯は複数の層状構造になっており、緑内障の患者の場合は繊維柱帯細胞や結合組織に異常が起こっており、房水が上手くシュレム管に流れていかない。
そこでグラナテックは繊維柱帯の細胞内シグナルの伝達を阻害して細胞骨格を変化させたり、細胞同士の結合を一時的に弱くすることで房水がシュレム管に流れやすくして眼圧を低下させる。
1日5回指示の理由
グラナテックは主に緑内障に使われる眼圧を下げるための点眼で、通常1日2回の用法だし、今まで1日2回の用法しかお目にかかったことが無かった。患者に聞くと、白内障Ope後の経過が悪く、角膜が炎症を起こして歪んでいると言われたとのこと。
はて、角膜とは…?
確かに白内障Ope後に眼圧が上がる人は一定数いて、たまに一時的に緑内障の点眼が処方されることがあるが、多くがブリンゾラミド点眼であり、グラナテックが選択されることはなかった。
これだけだと情報が乏しいので念のため疑義照会を行ったところ、Ope後に角膜内皮障害が起こっており、敢えてグラナテック点眼を1日5回にしている、とのことであった。
グラナテックの角膜内皮細胞への作用
調べてみると、グラナテックは角膜内皮障害に効果があるようだ。
以下、京都府立医科大学 眼科学教室より引用
2009年にRhoキナーゼ阻害剤が角膜内皮細胞の細胞増殖、細胞接着を促進し、アポトーシスを抑制することを発見し、さらに、Rhoキナーゼ阻害剤を点眼薬として用いることで、生体内で角膜内皮細胞の増殖・創傷治癒を促進することを、動物を用いた研究で証明しました。
中略
現在製薬メーカーと共同で治験の開始に向けた準備を進めています。
そういった理由で、角膜内皮障害が生じた場合はグラナテックを1日複数回点眼することがあるようだ。ただ、グラナテック点眼後は充血が起こりやすいため、その点は指導時に注意が必要だろう。
ちなみに下記の情報によると現在グラナテックの角膜内皮障害に対する臨床試験が進行中のようですね。
Rho キナーゼ阻害剤「リパスジル塩酸塩水和物」 角膜内皮障害を適応症とした 米国における第Ⅱ相臨床試験のIND申請のお知らせ